暑いですね~。
皆様如何お過ごしでしょうか。
夏と言えば毎年恒例の展覧会に「寅さん展」がございます。
と言う事でいよいよ葛飾柴又の「寅さん記念館」無料休憩所コーナーで
イラストレーター、漫画家さんによる「寅さん展」始まりです!!
今回の参加は数年ぶり、とても楽しい展覧会です。
今日こう万端 ひきたって よろしく お頼もうします!
と言う事で本日の日記は今年の寅さん展作品の裏話をば。
***********************************
今回の寅さん展のテーマは「ふるさとの家族」。
と言っても土着民の私には故郷というものがない。
生まれてこのかたこの土地から出て暮らしたことがなく
多分ここで一生を終えるんだと思う。よほどのアクシデントがなければw
そこで心のふるさととして、子供の頃に母がそこで働く関係で
毎日のように行っていた祖父母の商家を描くことに決めた。
それで古い写真を借りに実家に行ったのが2ヶ月ほど前。
さて「写真を借りるよ」と母に言ってアルバムのある部屋に向かうと
渋い顔した母がもれなくついてきた。
「どんな写真が必要なのよぅ」
とまことに歯切れが悪い様子。
「大坂屋の昔の写真だよう」
と言いながらアルバムを取り出してあら吃驚!
今は亡き祖父母の在りし日の姿をあてにして父母の結婚式の写真を借りようと思ったら
。。。。。。何コレ?
漏れなく破いてあるではないか。
「恵子さん(母の名前)なんですか、コレは」
と問うといささかバツが悪そうに2秒うろたえ、直ぐにきりっと開き直り
「だってそんな忌々しい写真なんかいらないじゃないのさ!」
とのたまう。
はは〜ん。母にとっての結婚式は悪夢の始まりであるものな。
見合いで好きなんだかもよく分からないまま周りに勧められるままに結婚した相手、
機屋の次男坊の父はまことに太平楽のお坊ちゃん気質で
宵越の金はもたねぇとばかり、飲む打つで(買うは知らない。うまいことされたのかしらねぇ?)
給料を全て使い果たし家に金を入れなかったツワモノである。
私は顔もこのあたりも似ちゃったんだよね、すこぶる。。。
ただし父を見ているので飲むは仕方がないとして「打つ」はのめり込むのが確実なので
こりゃ剣呑、と賭け事には手を出さないが(ここは賢いと自分で思う)。
兎も角途方にくれた母は自分の実家で働いて私たち3人の子供を育てたわけで。
(夫婦仲が悪くても子が3人出来る生命の神秘w)
「実家がなかったら子供と首をくくるところであった」
と
「今にみていろ〜、と思って生きてきたわ」
というまことに物騒な台詞が母の結婚生活の賜物なのである。
そんなに大変ならば離婚すれば良いと思うが
昔の人であるし、踏み出す勇気もなかったようで
「つがいの天敵」と子らに言わしめながら現在に至るw
ただそれでも悲壮感は家庭の中にはなくて、祖父母が傍にいたせいか、
お気楽で要領のよい父の事を嫌いになることもなく
「お父さんはねぇ〜w」
という感覚で3姉妹育ったのはある意味奇跡かもしれない。
なので今回の母による「結婚式写真抹殺事件」も
「ぷっ、やっちゃったのか」と言うのが第一印象で
ちなみに妹に話したら「ぎゃははは!」と言うのが彼女の第一声であった。
だがしかし、古いアルバムにへばりついて九死に一生を得た、母の爪痕が残る僅かな写真を見ていて
なんだか可愛そうになってきてしまった。
いや、現代の母ではなく、夢と希望と恥じらいを胸いっぱいに抱いて嫁いだ在りし日の花嫁さんが、だ。
「こりゃいかん。このままではお嫁様が救われぬ」
それにやっぱり、娘としては、じわじわとボディーブローのように「ショック」が効いてきた。
「決まったわ。今度の展覧会で描く「ふるさとの家族」はお母さんの花嫁姿だわ」
母はまことに複雑な顔をしたが、これは二人の間に生まれた娘の意地でもある。
あなたがその人生の中でマックスに夢と希望に包まれて一番美しかった時を蘇らせようではないか。
それが、今回の私の仕事だ。
以来、出版や別の展覧会の合間にあれやこれやと構図を考え、古い商品ポスターを調べ
若かりし頃の親族の写真(結婚式以外の写真)と向かい合い語り合い
今朝の今朝までギリギリと祈りをこめてかきあげた次第。
あ、お父さんは画面に入れてやらなかったw
さて自分で言うのは恥ずかしい事だが、この数年来で私の中では一番の傑作になった。
お母さん、描くと言う事は祈りなんだよ−。
明日から始まる展覧会でその美しき花嫁姿を皆さんにみて貰って
無事に手元に返ってきたら実家にプレゼントする事になっている。
母にしてみれば、嬉しいような、責められているような
まことに複雑な気持ちのようだが「ありがとう」と言っていた。
いいってことよ。
母は3ヶ月ほど前に大腿骨の手術をしたし、父は先月脳梗塞の発作を起こしたし
残りの人生を、もう寄り添いあっていきていくしかないのだから
飾られた絵の下で初心に返って夫婦仲良く暮らして欲しいものです。
それも、私の祈りです。
寅さん展
http://tollustration-v.jimdo.com/
スポンサーサイト